反対クリミナル

ゆっくり小説書いていきたいなと思います~

反対クリミナル 13

翌日、朝7時30分。今まで四人だったメンバーが五人に増え、共に歩を進める。

その中で真紘は一際嬉しそうに笑っていた。

「そう言えば俺ってヤマトに加護貰えたんですよ!遂に仲間入りですよー!」

涙を流しそうになるほど嬉しそうにそう言う真紘。

「いやいや、僕達最初から仲間だよ?」

或斗は少し困惑しつつもツッコミを入れる。だが周りも珍しく笑顔を浮かべて仲間の成長を喜んだ。

「よかったよかった。遂に真紘がただの馬鹿じゃなくなったな。」

相変わらず馬鹿を強調して疾風が頷く。星那はそれに上乗せして、

「昨日の召喚獣呼び出したのは効いてるみたいだよ。真紘の二つ名が《ハンタイ世界》で出回るのもそろそろかもね。」

と、喜んだ。真紘は仲間に着いて行けたのがとてつもなく嬉しいようで笑顔を絶やさない。だが疾風はまだまだ彼に不安を与える。

「恥ずかしい二つ名が出回らないといいな。」

そう言ってニヤニヤする疾風に或斗が「こらっ、変なこと言わないの!」と真紘を庇って怒鳴った。それを真紘は笑って見る。

「いいんですよ、恥ずかしくても。それが今の俺ってことじゃないですか。」

それを他の者が言えば、嘘くさかったかもしれないが真紘が言うと本当のことのように思える。

馬鹿だけどまっすぐ前を向いて正しいと思ったことは突き通す、それが真紘。だから星那はどれだけ呆れても彼を傍に置いていた。

「そうだね。所詮は人の評価だし、気にしすぎない方がいいよ。」

と、星那がそう言う。それを聞いた真紘は嬉しそうに笑って返事をする。

少しだけにぎやかになった犯罪者達は今日も同じように登校する…。

 

 星那と分かれて、中学の校門を通って、ロッカーで靴を履き替えて、また分かれる。

疾風と或斗はいつもの通り、教室へ入って行ったのだが、

「なんだあれ?」

いつもとは少し違って一人の机の周りに大人数が集まっていた。

少し気になるもので、疾風より人付き合いの良い或斗が声を掛けてその人だかりの中へ入っていった。

「どうしたの?」

「おお或斗!俺昨日見ちゃってさあ~ほら!カッコよくね?」

携帯の持込みが禁止なので、その少年は一枚の写真を手にしていた。しかし、或斗はその写真を見て驚いた。

そこに映っていたのは間違いなく大きな狐…にしか見えなかった。

「は、疾風!」

どうしようかと焦ってしまったので、とりあえず疾風の腕を引いて人だかりに引きずり込んだ。鬱陶しそうに疾風はその写真を見たがあのクール…と言えば聞こえが良い疾風の性格でも一瞬目を見開いた。

「へえー…。すげーじゃん、何処で撮ったんだよ。」

すぐに演技で誤魔化したが、或斗は驚いたまま動けていなかった。

「あっちのさ、お店がいっぱいある方だよ!人いっぱい居たのになあ…話題になると思ったのに。」

少年がそういう顔を疾風はしっかりと観察しているようだ。或斗は下手に口出ししない方がいいと、静かに見守る。

「ほー。そりゃあすげえーや。俺真紘に言ってこよ~。」

そういうと少年の机から離れて教室の扉を通った。或斗もその背中を追いかける。

教室を出てすぐのところで走り出した。

 

「絶対やばい。召喚獣は人には見えないもんかと思ってた。」

或斗も階段を駆け上がるのを言葉をしっかり聞き取りながら着いて行った。

「僕もだよぉ…、これじゃあこっち側で召喚獣は使いにくいかも…。」

折角いい味方をつけたのに、と或斗はうなだれて見せた。しかしその或斗に疾風は振り返って言葉を掛けた。

「まあそう凹むな。さっきの奴、写真を撮ってはいたけどただ話題にしたいだけだな。悪気があるって顔はしてなかったから敵ではないぞ。」

或斗は疾風がそう言うのを聞いたが安心などできない。正直、彼が敵であるとかそういうことではなく召喚獣の存在が世界中に知れ渡る方が心配だった。

だがきっと疾風はそんなこと指摘せずとも或斗が考えていることを理解しているだろうからわざわざ口にはしない。

 

「おーい真紘。」

さっき別れたばかりなのに、と真紘が席を立ってこちらへ歩いてくる。それを確認して周りに聞こえないくらいの声で或斗が用件を話す。

「大変だよ、召喚獣の写真が撮られてる。」

真紘は声を上げて驚くのではと思っていたが案外冷静で苦笑していた。

「あー、やっぱり見えていたのですね。昨晩ヤマトと話したのですが…。」

とそれに続けて真紘は昨日のことを話し出した。

ヤマトが昨日人間の視線を大量に浴びて気分が悪かったとそういう話をしてきたらしい。そこで真紘はヤマトに大事件のとき意外は召喚獣の姿にはならないように命令したそうだ。人間の姿でも大量の妖気を漂わせてしまうヤマトだが、人間の姿で居ればこちらの世界の人間にはヤマトが召喚獣だと気付かれないはず、となんとかそれで話が落ち着いたのだ。

疾風はそれを聞いて少し考えて或斗と目を合わせた。

「なあ、一回向こうの世界と連絡とってみないか?」

それを聞いて或斗は少し首を傾げて質問で返す。

「え?何を話すつもりなの?」

「あいつらって馬鹿そうだけど結構なんでもできるじゃん。召喚獣見えなくする道具くらい作れるんじゃないかと。」

「…そう言われるともう作ってるかもね。」

呆れるような頼りにするような、そんな会話の様子を真紘は眺めていてなんのことかと思った。そんな様子の真紘に気付いて或斗は人差し指を立てた。

「今日の放課後、また集まろう。結奈華が仲間に加わった報告と一緒にヤマトのこと話すよ。…とっても頼りになる同志達にね。」

少し楽しそうに言う或斗に真紘はただ、はい、と応えた。