反対クリミナル

ゆっくり小説書いていきたいなと思います~

反対クリミナル 7

「ええー!?呼んじゃったんですか!女の子!!」

「何でボクの家なの。」

日が沈んで、物好きは部活を行う時間。今日も朝と同様、4人で星那の家に集まっていた。

集まって駄弁るためだけの客間に今日は本当に客が来るのだから少しだけ違和感を持った。焦るのは真紘だけだが。

「全然女子っぽくないから安心しろよ、妖精で今まで差別されてきたとかどうとか…、まあ二つ名はあるし真紘よりは実力もあるだろうな。」

また後ろで腕を組んで椅子に腰掛ける疾風は今日聞いてきたことをそのまま話した。

ショックを受ける真紘に或斗が苦笑いして、やっぱり星那はそれに反応を見せない。

「ふーん。で、性格は?」

その星那の質問に疾風はやっぱりな、とそう思う。出会う前に探ろうとする、彼と結奈華は似ていると思った。

「見て確かめればいいんじゃないの?無愛想でロボットみたいに笑わない奴だって。」

疾風がそう言うとベルが鳴る。彼女が来たと、そう知らせる鐘が。

「ああーっ、今お茶を…」

廊下へ駆け出そうとする真紘に星那はやっと一声掛ける。

「お茶はいいから此処へ連れて来てよ馬鹿。」

呆れたように赤い目で訴える。その目を見てまたやってしまったとでも言うように礼をする。

「申し訳ございません!今お連れしますーっ!」

バタバタと言う足音と共に走り去る真紘。

「騒がしい奴だな、あいつは。」

疾風は一連のやり取りを眺めたあとにそう言う。或斗も苦笑と共に頷いた。

 

その後間もなく、彼女が3人の中へやってくる。

「人を呼び出してなに?何の用だったの?」

結奈華はその雰囲気に遠慮するわけでもなく真紘より先に部屋に入り疾風にそう訪ねた。

「別に。お前の方が俺達に用あるだろ、言いたいこととか。そういう顔してたぞ。」

その疾風の言葉にただでさえ優しさのない顔を硬くする。

「失礼ね、人を顔で判断しないで。そっちから用が無いなら私帰るわよ。」

星那も或斗も真紘も、二人のやり取りを見ていた。相性が悪そうだなあと。

3人は知っていた。疾風は基本的に誰かと合うことが無いと。顔を見られるだけでほとんどの情報が知られてしまう上に疾風が自分の感情を顔に出すことなどよっぽどのことで、それが気に食わないと思ってしまう者は数え切れないほど居た。本能的に不快だ、と。

恐らく彼女もその一人。

「勝手にしろよ。それはお前が困るだけだって、俺は知ってるしな。」

図星。彼女の顔が少しだけ歪む。けれど彼女は後ろを向いて、すぐに部屋を出て行こうとした。

「いいわよ、別に。まだ一人でやれる範囲だもの…。」

結奈華は真紘の横を通って扉の外へ出て行く。

「気が向いたらまた来るわ。…一人が辛くなったらね。」

一人が辛くなったら。疾風はその言葉さえ観察する。その鋭い紫の瞳で。

少しの間を置いて、玄関を開ける音がする。

 

そのすぐ後。

「あっ…、待って!結奈華!!」

声を荒げたのは或斗で。言葉を言い終わる前には立ち上がって彼も玄関を出て行った。疾風も星那もなんとなくは、その意味を理解していた。

「行かなくて良いの?疾風。」

星那がそう尋ねる。その場の空気に戸惑うばかりの真紘を他所に。

「…或斗一人だって大丈夫だろ。もしかしたら、結奈華だって捕まえてくるかもだぞ。期待できるな。」

 へへ、と声を出して笑うと星那も真紘も気が抜けた。やっぱり疾風の考えることはよく分からない。

「ですけど、或斗様は未来予知で何かお見えになったと言うことですよね?うーん…強敵じゃないといいですね。」

玄関のほうをぼんやり見つめながら真紘は曖昧にそう言う。疾風は朝の話を気にしながら真紘を観察する。馬鹿は見えやすいのだ。

「真紘も行ってきたらいいじゃん。或斗が心配なら。」

疾風が意地悪そうに、真紘にそう言う。彼は案の定、背筋をピンと伸ばして手を振る。

「俺なんかが行ったところで…邪魔になるだけです。…ちょっと失礼します!!」

耐え切れなくなった、という様子で一礼して走り去っていった。玄関とは逆の方向だ。星那はよく分からないといった様子で彼を見送る。

「…なに?あの馬鹿…」

不満そうに星那は足を組む。それにやっぱり疾風は笑って、

「馬鹿なりに色々悩んでんだろ。見守ってやれよ、ご主人様。」

と、何もかも分かったように言う。星那はそれでも珍しく心配そうに眉を顰める。

「…あんなの真紘らしくない。」

俯き加減で、小さくその言葉を漏らした。